■マコの傷跡■

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chapter 56




~ chapter 56 “根っこ” ~


一緒に輪っかから連れ出したい、と思っていてもそれは結構しんどかった。
私だって人に何か言えるほど自分が完璧な訳ではなかったし、まだまだ模索しながら生きているのだから
「こうした方がいい」と言えるほどそれが本当に正しいのか自分でもよくわかってない事が多かった。
だから彼女には「私はこういう事があったけど、こう思うようにしたよ」とか
「こういう時はこうしてみる事にしたら私は結構上手く行ったよ」とか、
そういう自分の体験談を言うくらいしか出来なかった。
それが彼女の場合に当てはまるかどうかもわからないし、どれだけ彼女に届くかわからない。
私は彼女が何かのヒントにしてくれたらと思って、彼女に自分の話をひたすらしていた。
もしかしたらそれは彼女より私自身の為になっていたかもしれないと今、思う。

話すと相変わらず「マコさんは頑張ってきたんだね」とか「偉いね」とか「すごいなぁ」とか
そんな反応だった。そう思うなら一緒にそうやってみようよ!と思うんだけど彼女はそれをしない。
よく「マコさんは旦那さんが居てくれるからいいなぁ」と言われたけれど、
それは私にとってすごくイライラする言葉だった。私だって、全て旦那がなんとかしてくれた訳じゃない。
ずいぶん支えにはなってもらっているけれど、旦那は心の病気については全く知らず
何も悲しい出来事がないのに落ち込んだり泣いたりする私を理解出来ない人だった。
説明しないとどうしてそんな事になってるのかわからず、どうしていいのかもわからずに居る人だった。
でもちゃんと説明すれば、ただそのままを「そういうものなのか」とストレートに受け取ってくれる人だ。
旦那はそうやってそのままの私を受け入れてくれる柔軟性と強さを持った人だけれど、
説明してわかってもらう努力を私もたくさんしてきたと思う。
自分の気持ちを上手く説明出来なくて 夜中、家を飛び出した事もある。
そういう時も、喧嘩をして「もうほっといて!!」と思わず言ってしまった時も、私は放っておかれた。
旦那は、喧嘩をした時は1人になりたいと考える人らしい。
自分がそうだから、私もそうだと思って放っておいたのだろうけれど、
私は本当はかまわれたいのに素直に言えず「どうしてわかってくれないのよ!」と思っていた。
自分から理解してもらう努力をせずに、人にわかってもらおうとする事は所詮無理なのだと思う。
それではずっとわかってもらえないんだな、と思い、たくさん旦那と話しをした。
こういう場合はどう思うか、どうして欲しいか。具体的な例をいくつもいくつもあげて
私の根っこを一緒に探ってもらい、相手の根っこを見ようとした。
相手の根っこが見えてくると、色んなところで応用が利くようになる。
“この人はこういう場合こう思う人だから、きっとこうして欲しいと思うだろう”と想像する事が出来るようになる。
私はそういう根っこの探りあいを彼女ともしたかったけれど、質問しても彼女は自分でもよくわかっていないようだった。
自分で自分自身をたくさん分析しないと自分を人に説明する事は出来ない。
自分がどうして欲しいのか、何が欲しいのか、自分自身でも具体的に理解してないのに、
誰かがなんとかしてくれるものだと思い、その誰かが居ないと嘆く彼女に、
そして、私が旦那にそうしてもらってると思ってる彼女に腹がたった。

“アンタは少しでも人にわかってもらおうと何か努力してるわけ!?
自分からドアを閉ざしているくせに誰も私をわかってくれないなんて嘆いていても、そんなの当たり前でしょ!!
幸せは下を向いてただ待ってたって声をかけてくれないんだよ。
目の前を通るものを自分でしっかり見て、もっと幸せを自分の力で掴もうと動いたらどうなの!?”


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